抗菌薬は、微生物に対する作用があり、感染症の治療、予防に使用されている薬剤の総称です。 近年、抗菌薬の不適正な使用により、薬剤耐性菌とそれに伴う感染症の増加が世界的に大きな問題になっています。
1980年代以降、新たな抗菌薬の開発は減少する一方で、病院内を中心に新たな薬剤耐性菌が増加していることから、抗菌薬を適正に使用していかなければ、将来的に感染症治療に有効な抗菌薬がさらに限られ、結果的に薬剤耐性関連の死者数が増加するという事態になりかねません。
不適切な抗菌薬の使用に対して何の対策も講じなければ、薬剤耐性菌が直接的または関連要因となって、2050年には全世界で年間1,000万人が死亡すると推定されています。
2021年時点で、薬剤耐性菌による死亡者数は年間114万人、薬剤耐性菌が関連した死亡者数は年間471万人いると推計されています。
歯科における経口抗菌薬使用量割合は医科の10%程度ですが、その使用目的は抜歯後等の手術部位感染や術後合併症の予防を目的とする抗菌薬の処方が81.2%を占めています 。
抗菌薬が適正に使用されていない状況(不適正使用)は、「不必要使用」と「不適切使用」に区別できます。「不必要使用」とは、抗菌薬が必要でない病気において抗菌薬が使用されている状態を指します。また、「不適切使用」とは抗菌薬が投与されるべき病気や手術後の感染予防が必要な状態において、抗菌薬の選択、使用量、使用期間、タイミングが標準的な治療や予防的投与法からはずれた状態を指します。
抗菌薬が治療として適応となる病気は、抗菌薬の投与が標準治療として確立している感染症と診断されている又は強く疑われる病気であることが原則となります。そのため、そのような病気以外での抗菌薬使用は最小限に留めるべきです。ただし、歯科領域においては、歯性感染症の治療目的よりも抜歯等の術後の手術部位感染予防を目的に抗菌薬が使用されることが多く、その場合はガイドライン等にしめされた投与基準にとどめることが重要です。
歯科全体における抗菌薬の処方は、経口抗菌薬が99%を占めます。歯科外来で用いられる経口抗菌薬は、①下顎埋伏智歯抜歯や歯科用インプラント埋入手術等での手術部位感染予防や、②根尖性歯周炎や智歯周囲炎等の歯性感染症治療を目的として使用されることがほとんどですが、③手術・処置に伴う感染性心内膜炎予防等を目的としても使用されています。
「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」等の抗菌薬適正使用に関するガイドラインが策定され、歯科においても薬剤耐性化の懸念が少ないペニシリン系と第1世代セファロスポリン系の抗菌薬が推奨されています。それらにアレルギーのある場合には、リンコマイシン系抗菌薬が推奨されています。
現在でも、歯科診療所では、使用される抗菌薬の半分程が複数の種類の細菌に対して効果のある広域スペクトルな第3世代セファロスポリン系抗菌薬となっていますが、薬剤耐性菌の出現を招く可能性があるので、スペクトルの狭いペニシリン系と第1世代セファロスポリン系の抗菌薬への移行が望まれています。
分水ライオンズクラブ 会員 L 伊藤 直之

ご入会はこちら
お問い合わせ



0256-36-7631 












